木は生きている...

「木は生き物だから」はよく耳にする表現ですが、実は立木の時から樹幹のほとんどは死んでいるのです。
確かに、一つの種から木へと成長して行きますから「生きている」と言えないことはありませんが、実際に樹木中で生命活動をしているのは、成長点【先端部あるいは枝や幹、枝と枝の股から出る芽】と細胞分裂によって樹幹を肥大成長させる樹皮と木部の間にある形成層、そして栄養を貯蔵する機能を持つ辺材部【樹皮に近い外側の白っぽい色をしている部分で別名「白太(しらた)」と呼ばれている】の柔細胞だけで、樹幹全体のわずか3~4%でしかなく、残りはすべて死んでミイラ化した細胞の集合体です。
それは自然界において生存競争に生き残るために、大量のエネルギー(栄養)を使って細胞を生かしておいても、まったく意味がなく、成長に不必要な部分はすべて死なせてしまうからです。
では、なぜ「木は生き物」と言われるようになったのでしょうか?
どうやらそれは、水分を吸ったり、吐いたりする調湿作用によって木が伸縮することを「命あるもののように作用している」という意味で表現し、そこからさらに発展し「呼吸している」とまるで生き物であるかのように思われているところからきているようです。
また、大昔から「山や木には神が宿る」と信じられ信仰の対象とされて来たことや「巨木には神が宿る」と神社などで長年保護されて来たこと、さらに木で作られた仏像が祈りの対象とされて来たことなどに起因しているようです。
しかし、たとえ葉が青々と茂った樹木であっても、実際に家を建てるために用いられる木材となると、立ち木の時からすでに死んでいる部分を材料として伐り出し、使用しているわけですから、決して生きてはいないのです。

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